刺身は洗わないとヤバい!?元魚屋が刺身の洗い方と必要性を解説します|イクメンライフハッカー

刺身は洗わないとヤバい!?元魚屋が刺身の洗い方と必要性を解説します

9月6日(火)17時37分、Yahooニュースに配信された高級旅館「加賀屋」の食中毒。

食中毒の原因が「刺し身の洗い方が不十分だった」と記載されたことから、

「刺身って洗うの?」
「どうやって洗う?」
「そのまま食べたら汚いの?」

と疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。







石川県は6日、同県七尾市の和倉温泉にある高級旅館「加賀屋」に宿泊した男女15人が食中毒になったと発表した。うち10人が入院したが、症状は全員軽く、9人は既に退院したという。
県薬事衛生課によると、2日に加賀屋で夕食を食べた24~87歳の宿泊客15人が下痢や嘔吐(おうと)などの症状を訴えた。同課は腸炎ビブリオが原因と断定し、夕食で出た刺し身の洗い方が不十分だった可能性があるとみている。
小田與之彦社長は「ご迷惑とご心配をかけ、心よりおわびする」とのコメントを出した。 

出典 Yahooニュース


そこで今回は元魚屋の私が3年間、毎日30万円/500パックの刺身を製造・販売した経験を元に「刺身を洗う」を解説します。

クソ長いので暇な人だけ読んでください。


※今回は「刺身を洗う」の解説が目的です。食中毒の原因や対策はそれぞれ専門のサイトを参照してください

※菌やウイルスの対処法について、検索結果上位のサイトでも「腸炎ビブリオは真水に強い性質を持つ」と大ウソが記載されていることがあります(正しくは真水に弱い)


腸炎ビブリオは、ビブリオ属に属する好塩性のグラム陰性桿菌の一種。主に海水中に生息する細菌であり、本菌で汚染された魚介類を生食することで、ヒトに感染して腸炎ビブリオ食中毒を発症させる。
原因食品としてはイカや貝類が比較的多いが、その他の一般の魚など、ほとんどの海産魚介類の生食が原因になりうる。腸炎ビブリオの感染が成立するには約100万個以上の生きた菌の摂取が必要と言われ、食中毒性サルモネラと同様、経口感染症の起因菌の中では比較的、感染・発病に多数の菌を必要とする部類に属する。
腸炎ビブリオ食中毒は、6-12時間の潜伏期の後に、激しい腹痛を伴う下痢(便に精液臭あり。ときに血便を伴う。)を主症状として発症し、嘔吐、発熱(高熱ではない)を伴うことがある。

出典 wikipedia

加賀屋の食中毒の解説


「刺し身の洗い方が不十分だった」の”さしみ”について、これは「平作り」や「そぎ作り」など、箸で食べれる状態の刺身では無く、食中毒の原因が鯛やハマチだった場合は「刺身に切る前の上身(三枚に下ろした身)に付いた雑菌の水洗いが不十分だった」が正しい表現になります。

いわゆる刺身の状態で水洗いすると鮮度も味も落ちます。

コイの刺身などで用いる「洗い」という調理法を除き、高級料亭がそんなことをする訳ありません。

また、高級料亭で定番の貝や海老の刺身(貝殻に入ったサザエの刺身、車エビの踊りとか)の場合、「刺身材料の貝殻やエビの水洗いが不十分だったため、貝殻やエビの殻に付いた雑菌が刺身に付いた」となります。


刺身は洗いません。

洗うのは刺身になる前の上身まで。


なお、魚介類に多い腸炎ビブリオは真水に弱い性質を持つので、刺身にする食材は必ず流水で洗い流すべきです。

刺身を洗う必要性


刺身を洗うについて、ネットで検索すると「うちはスーパーで買った刺身も全部洗ってから食べる!」という記事がありました。

また、この記事のコメントに「お店の刺身はお店が適切に調理しているから大丈夫」というものもありました。


これらについて解説すると、スーパーの刺身を洗って食べるのは手間でありますし、間違いなく味が落ちるのでやり過ぎと感じますが、腸炎ビブリオが原因による食中毒リスクは間違いなく減ります。

お店の場合、怖いのは他からの菌の付着で、正しく調理していても他の不潔な調理師が調理器具やトレイにふれ菌が付く、まな板や冷蔵庫の取っ手の菌が付くなど、可能性を考えるときりがありません。

この記事の方のように潔癖症の方は洗って食べたくなる気持ちも分かりますが、どうしても流水で洗う場合は洗った後にキッチンペーパーで直ぐに水気を拭きとる。

ペーパーを2、3回変えて水分が出なくなるまでふき取ると味が落ちなくて良いと思います。

※魚の身に真水をつけると浸透圧の差で水を吸収してしまうので、流水で洗い流したのちに1%程度の薄い塩水にさっとくぐらせることで、鮮度の低下を防ぐことができます


もう一つの声「お店の刺身はお店が適切に調理しているから大丈夫」については、経験上かなり怪しいと思います(後述します)

魚はいつ水洗いするべき?


魚を刺身に調理する際、何度か水洗いすると思います。

1)姿の魚があるとしたら、頭と内臓を取ったとき

2)三枚に下ろしたとき

3)お腹の骨をそいだとき

4)皮をはいだとき

5)上身(刺身のブロック)にしたとき

6)刺身に切ったとき

真水で洗いすぎると鮮度が落ちますので、なるべく水に触れる時間を短くしたいもの。

一般的には1)と4)の2回で問題ないでしょう。

ここできれいに水洗いし、水分を拭きとれば腸炎ビブリオの対策としても有効です。

その他、アニサキスなどの寄生虫のチェックも4)で行い、虫が付いている場合はきれいに取り除く必要があります(もしくは加熱調理行き)

サンマなど、3枚に下ろしたときに内臓や血合いの汚れが付きやすい魚は2)、または3)でも流水で洗う方が内臓の匂いが移らず無難です。

水洗いしても鮮度や味を落とさない方法


真水で水洗いするともれなく鮮度が落ちます。

鮮度を落とさないように水洗いする方法は下記の通りです。

●食べる直前に調理する

真水に触れた時点から鮮度が低下し始めます。

●流水で洗った後、1%程度の塩水にくぐらせる

水が汚れていると本末転倒。菌床になりますのでこまめに交換しましょう。

●洗った後に水分を拭きとる

真水で洗いっぱなしにしていると、どんどん水っぽくなってしまいます。

魚介類をとってそのまま食べても大丈夫?


魚を食べる(調理する)際、衛生的にはどんなに新鮮な魚でも必ず水洗いすべきです。

テレビで水揚げしたばかりの貝やタコをそのまま食べるシーンを見ますが、運が悪いとアタリます。

この運が悪いというのは水揚げした海域の海水に大腸菌が多く含まれている場合や、菌というのは1つ2つで食中毒になるものではなく、お腹を壊す閾値があり、実際に当たるかどうかは個人差や体調に左右されます。

お店の刺身はキレイ?


お店の衛生管理と担当者次第、、では身も蓋もありませんので個人的な感想を記載します。


個人店の魚屋は本当にお店次第。


イオンのような大手スーパーの鮮魚売り場はキレイにされていると感じます。

帽子にマスク、刺身を調理する人は手袋装着。

黄色ブドウ球菌の予防に効果的です。

その他、調理担当の多くがおばちゃんであることも衛生面ではプラスに感じます。

バイトでもパートでも、おばちゃんは本当によく働く。

調理の技術だけでなく、家事で養われた掃除や衛生管理も優れていると思います。


危ないのは微妙な規模の魚屋チェーン。


従業員の教育は徹底されているか。

調理場や刺身場の清掃内容、手順はマニュアル化されているか。

定期的なチェックは実施されているか。


ないと思います。


黄色ブドウ球菌とは、ヒトや動物の皮膚、消化管(腸)常在菌(腸内細菌)であるブドウ球菌の一つ。黄色ブドウ球菌は人体の皮膚表面、毛孔に存在する。この毒素は耐熱性で、食品を加熱することによってブドウ球菌そのものが死滅しても、毒素は耐熱性のためそのまま残る。それを食べた場合に激しい嘔吐を伴う食中毒を引き起こす。

出典 wikipedia

魚屋で経験した衛生問題


「刺身を洗う」に関連して、魚屋の時に経験した衛生管理上の事例を挙げます。

●落とした上身を洗って使う

上身まで調理した状態で誤って床に落としたケース。

心理的には気持ち悪いですが、流水できれいに流せば衛生的にはほとんど問題ないはず。

一般的に落としたくらいで廃棄するケースは少ないと思います。

●冷蔵庫の取っ手が汚い

魚屋の冷蔵庫といえば業務用のステンレス製の冷蔵庫。

まな板や包丁はキレイにしていても、冷蔵庫の取っ手が汚いことが良くあります。

腸炎ビブリオや黄色ブドウ球菌など、菌の住処になっていることも。

魚屋・魚売り場へ行くときは冷蔵庫がキレイかどうかもチェックしてみてください。

ちなみに、保健所の監査時はもれなくここをチェックされ、既定値以上の菌が検出されるとそれなりの処分を受けます。

●刺身用の上身にチ○毛

全ての魚屋がトイレの後に手を洗うとは限りません。

私が刺身場を担当していたとき、調理場から運ばれたハマチの上身に極太の縮れ毛が付いていたことがあります。

●お買得の「切れ端パック」はヤバい

刺身売り場で、魚の切れ端だけが入った商品を見たことは無いでしょうか。

刺身を作る際に生じた切れ端をまとめた、いわばクズの盛り合わせ。

鮮度的には他の刺身と変わらず、色々の魚が沢山入っているのでお買得かも知れません。


ただ、調理担当によっては朝から晩まで切れ端をバットにため、山盛りになってからパッキング・陳列されるケースがあります。

その間、切れ端は常温で放置。

雑菌は20度以上で急激に増殖することを踏まえると、恐ろしい限りです。

●掃除をしないやつ

どんな職場にも清潔な人とそうでない人がいます。

私がムカついたのは私が休みの時に刺身場に入り、刺身を作る先輩。

この人の掃除がテキトウでした。。


洗ったのか洗っていないのか分からないバット(ヌメリあり)

冷蔵庫の隅に残った魚の切れ端。


そもそも、手洗いしているかどうかも怪しく、

「ちゃんと掃除せぇや!」とブチ切れたのは数え切れず。

(先輩ごめんなさい)

●爪の間の黒いカス

食品に関わりながら爪が長い人がけっこういます。

爪が長いのです。

爪の間に黒いカスのようなものが見えるのです。

おじさんの爪垢ほど気持ち悪いものはありません。

まとめ


最後の方は恐ろしい話になりましたが、残念ながら実話です。

途中の「うちはスーパーで買った刺身も全部洗ってから食べる!」というのは正しい判断かも知れません。


でも、、


洗うくらいならもうひと手間かけて、魚をさばいて刺身を食べて欲しい。

最初は大変かも知れませんが、その方が美味しくお買い得です。


以上、刺身は洗うな。


↓元魚屋の魚料理はこんな感じです↓

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